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「保育士+英語」の就職先は??
「保育士+英語」の就職先は??
最近では、通常の私立保育園や幼稚園でも英語活動を取り入れている園が増えてきました。一方で、英語力を活かして子ども教育に関わる仕事として、国内ではインターナショナル・スクール、海外では現地保育園などで働いてみたい!という方々の声がよく聞かれます。今回のコラムでは、英語力と保育士の資格を活かした就職先として、国内インターナショナル・スクールとカナダの保育園の事例をお役立ち情報とともに簡単にお話しさせていただきます。
①国内のインターナショナル・スクール(プリスクール)
そもそも、国内のインターナショナル・スクールと言っても色々あります。特に未就学児(小学生未満)を対象とするプリスクールが多く見られるのも、社会的、法的な要因があるように思えます。まず、インターナショナル・スクールという名称は特段、学校法人を指すものではありません。それにより、保育園であれば一般的に無認可保育園と呼ばれる形態であろうと、認可保育園であろうと、東京都の認証保育園であろうと、一般的に言う学校法人等が運営するインターナショナル・スクールの行う保育・教育サービスの提供は可能です。
極端な話、子ども英会話スクールもプリスクールも法的認可や登録義務は同じものという場合も有り得るのです。そのため、小学校以上に多い学校法人や国際バカロレア認定校、及び海外の教育委員会公認校(例えば、海外の高校卒業資格が取れる)を除き、プリスクールの教員が必ずしも日本の保育士資格や幼稚園教諭免許を持っているとは限りません。
一般的には、教育機関(企業)としての説明責任やサービスの質の管理のためにも、教員の採用には一定の資格が求められますが、法で定められたものではありません。
例えば、採用資格として、海外の保育関係の資格のみ(必ずしも海外の「保育士」資格ではない)、または日本の保育士資格➕英語力などで可というところも多いでしょう。
②カナダの保育園
そもそも、大まかに互換性はあるものの、カナダでは州政府が独立した一定の統治権を持っているため、保育士免許は国家資格ではなく、州ごとで認定されます。(自動車運転免許も同じです)カナダ・ブリティッシュコロンビア州を例にとってみると、保育所は基本的に民間により運営されており、すべて同等の「認可」(大きく分けて、保育園、プリスクール、家庭保育所の3種がある)を受けないと設置運営ができません。保育士資格にも色々あり、国家試験のようなものはなく、通常の保育士免許(3歳以上の保育が可能)は1年ほどカレッジに通うなどして取得します。そのほか、アシスタント免許、乳児保育免許(0−2歳児保育)と障害児保育士免許などがあります。日本ほど、大学進学と学位の取得がポピュラーでないカナダでは、日本でいう短大での短大学士号なども含めた「学位」を教育の分野で持っていると、施設長など管理職レベルへの道が比較的優先されて開けると言えます。また、日本の保育士免許はカナダのものへ書き換えることが可能です。一方、経験を重んじるカナダでは、当学で提携しているローカルのカレッジでの学習経験や資格、現地保育園でのボランティア経験などが有力な採用材料となるでしょう。
文責:長谷山康一
付加言語としての英語を学ぶ子ども達
付加言語としての英語を学ぶ子ども達
みなさんこんにちは。
今日は本学の教員のコラム、記念すべき第一弾をご紹介します。
「付加言語としての英語を学ぶ子ども達」
”英語を学ぶ前にしっかりと日本語を!” ”知らない言語(英語)が壁になって本来学ぶべきことが学べない、身につかない” など、幼少期の付加言語の習得に関しては様々な懸念が一般社会においては耳にするところかと思います。一方、学問的様々な研究ではこのような”神話”を覆す事実が次々と明らかになってきています。日本国内ではまだまだ広まっていないのも現実としてあるように思います。今回は簡単にではありますが、アメリカのFoundation for Child Developmentというニューヨーク市の公的機関の一種が発表している報告書にあるこれら他言語学習に関する”神話”の中から、日本での文化的背景を鑑みて面白そうなものを2、3ご紹介していきたいと思います。この報告はマサチューセッツ州所在のアメリカ最古の大学と言われるハーバード大学の教育大学院でも教材として紹介されているものです。(以下では、引用にあたって日本の環境に合わせ、「英語を外国語(付加言語)」、「日本語を第一言語(母国語)」として表現を調整するものとします。また、解説には当該文献の概略引用のほか、筆者の知識(他文献)からくるものも含まれます。)
神話1:「幼少期に2言語学ぶことは日本語の習得を惑わせ、妨げる。」
実際には様々な研究結果から、新生児の時期から2言語を学ぶ能力が人間には備わっていることが明らかになっています。2言語の習得はアルツハイマーの予防になる可能性があることや、単一言語習得とは異なった思考プロセスが行われており、思考力など人間の能力に優位な特性をもたらすと考えられています。
神話2:「日本語を母国語とする話し手は、2言語での教育環境(バイリンガル教育環境)においては勉学及び言語に遅れを経験する可能性がある。」
これも、神話1と通ずるところもあるかと思います。例えば、アメリカのユタ州で行われている中国語、フランス語やポルトガル語などでの多言語教育プログラムにおいて、その子ども達は州の一般的な学力テスト(共通言語の英語で行われる)においても非常に優秀な結果を出しています。
神話3:「未就学年齢から小学3年生までの時期における100%の英語イマージョン教育は英語を付加言語として学ぶには最適な方法である。」
英語漬け、そうすれば子供はすぐに慣れる、完璧な英語のネイティブスピーカーになれる、という神話。研究によると、乳幼児期の100%の他言語イマージョン教育には、中長期的な発達を視野に入れると様々なリスクがあることが明らかにされています。家庭、親族、コミュニティでは第一言語(日本語)との関わりは切っても切り離せません。このことからも日本での英語教育には日本語のあり方を問う必要も十分にあります。一方、この時期の他言語の「導入」は、様々な価値のあるものだとも多くの研究が提唱しているのも上にあるように確かです。
余談
神話1、2は学問的に言えば脳神経科学や心理言語学の基本的研究から見ることができるでしょう。神話3あたりが、応用としてこのような現実を語学に限らずの全人間的な子ども教育の現場でどのように活かしていけるか、小稿の筆者の専門です。英語イマージョン教育という表現もだいぶ耳にするようになってきたかもしれませんね。とは言っても、イマージョン教育にも色々あります。デュアル・イマージョンのように、例えば日本語と英語の2言語での教育もあります。一方、諸研究でもリスクがあると言われる英語100%のイマージョンをとってみても、例えばクラスで、一見、先生が英語のみを媒介に保育や授業を進めているからといって、一概にそれは厳密な意味で英語100%のイマージョン教育であるとも言いがたい場合もあることでしょう。
現代の国際社会では、第二言語の習得は、第一言語や人間の他の様々な能力の発達に有用なことが証明されてきました。一方で、他の様々な人間能力(思考力・判断力など)や第一言語の習得が第二言語習得に及ぼす影響も大きいのです。(詳しくは、本学・専攻科科目「言語教育と幼児教育」で!)
参考文献: https://www.fcd-us.org/
文責:長谷山康一